僕はこの本を読むのに二年かかりました。(二年かかったのは
僕自身に紆余曲折があったから)
初めは、村上春樹さんらしい、同じような文体
とストーリーの本なのかなと思いましたが
諦めず、今日、読み終えました。
そして思うのは、観念や比喩や暗喩に
惑わされず、強く、自分を信じて生きろと
いっている、高齢にさしかかった作家の
次世代に託すメッセージなのかなと今は思います。
騎士団長殺しという絵は、青年騎士が女性をめぐってその女性の
父親の騎士団長を殺めてしまう、人類の根幹的な
物語の暗示なのだろうと僕にはみえます。
そして主人公の肖像画家は恋人に去られ
最後に復縁をする。まったくもって、スマートな
作品でした。そこには破綻が一つもありません。
僕は小説を書いたこともありますが、
どこか綻びができてしまうのです。
美しい、湖に、鳥達のさえずり、ふりだした雨
そんな一冊でした。